解体の種類と特徴
Ⅰ. 建物構造別の解体工事(相場・工期・配慮点)
建物の構造によって、必要な工法・重機・費用・工期が大きく変わります。
1) 木造解体工事
対象:木造住宅・平屋・古民家 など
相場・工期の目安:3〜5万円/坪・約1〜2週間
特徴
・件数が最も多い。手壊し+重機の併用が基本
・分別解体(柱・梁・壁・屋根材を分ける)でリサイクル効率化
・築年・改修歴によりアスベスト調査が必要なことあり
配慮点/リスク
・密集地では防音・防塵・散水の強化が必須
・屋根材・石膏ボード量によって処分費が増減
2) 鉄骨造(S造)解体工事
対象:鉄骨アパート・倉庫・店舗・工場 など
相場・工期の目安:4〜7万円/坪・約2〜3週間
特徴
・溶断作業や大型重機を使用。火気管理が重要
・重量物が多く、搬出コストが相対的に高い
・鉄骨は資源価値(リサイクル)が見込める場合あり
配慮点/リスク
・溶断時の防火・火花飛散防止、近隣安全の徹底
3) 鉄筋コンクリート造(RC造)解体工事
対象:マンション・ビル・ホテル・商業施設 など
相場・工期の目安:6〜10万円/坪・約3〜5週間
特徴
・コンクリート+鉄筋で頑丈。ブレーカー等で破砕
・粉じん、振動、騒音が大きく、近隣対応が必須
・都市部では階上解体の採用が多い
配慮点/リスク
・廃材は重量物中心で処分費が高額になりやすい
4) 鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)解体工事
対象:高層マンション・大型オフィスビル など
相場・工期の目安:8〜12万円/坪・約4〜6週間以上
特徴
・鉄骨×鉄筋コンクリートの最強クラス構造
・重機・溶断・破砕を組み合わせる高度施工
・防音・振動・安全管理の難易度が非常に高い
配慮点/リスク
・工程管理が長期化。分別・搬出も計画精度が重要
Ⅱ. 工法別の解体工事(適用条件・騒音/粉じん・コスト感)
現場環境や構造に応じて最適工法を選択します。進入性・高さ・近隣配慮が判断軸です。
1) 手壊し工法
特徴:重機を使わず人力中心で解体。騒音・振動・粉じんを最小化
適用:住宅密集地/狭小地(重機不可)/部分解体
デメリット:工期長め・人件費増
2) 重機解体工法
特徴:最も一般的。油圧ショベル・ブレーカーで効率施工
適用:戸建〜中層ビル/作業スペース確保できる現場
注意:粉じん・騒音対策は必須(散水・シート)
3) ロングアーム工法
特徴:最大30m級のアームで上層から順次解体
適用:中〜高層、周辺が開けている現場(搬入可)
4) 階上解体工法(カットアンドダウン)
特徴:屋上に小型重機を載せ、上から1フロアずつ解体
適用:高層RC・SRC、密集地・搬出制限の都市部
5) 内装解体(スケルトン解体)
特徴:骨組みを残し内装のみ撤去(原状回復・リノベ前)
適用:店舗・オフィス退去/原状回復
ポイント:残置物撤去・電気ガス配管処理の段取りが鍵
6) 部分解体
特徴:建物の一部のみ解体(壁・増築部分 等)
適用:リフォーム・増改築/倉庫・車庫のみ撤去
注意:構造体を傷めない施工計画が重要
7) 爆破解体(特殊工法)
特徴:火薬使用で一気に崩落させる
適用:ダム・プラントなど特殊案件。日本では稀(規制厳格)
注意:高度安全対策・許可が必須
Ⅲ. 目的別の解体工事(用途・一緒に検討したい工事)
依頼の目的に応じて、必要な範囲・仕様・書類が変わります。
1) 全解体工事(更地化)
内容:建物を全て取り壊し更地へ
用途:建替え/土地売却/駐車場化
セット検討:整地仕様(土戻し・砕石・転圧・勾配)
2) 部分解体工事
内容:家屋の一部のみ撤去(例:増築部・壁・屋根)
用途:増改築・リフォーム
セット検討:構造計算・耐力壁の確認
3) 原状回復工事(店舗・オフィス)
内容:入居前の状態へ内装・設備撤去(スケルトン含む)
用途:テナント退去・契約満了
セット検討:管理規約/引渡基準、夜間作業の可否
4) 外構解体工事
内容:塀・ブロック・土間・カーポート・樹木などの撤去
用途:駐車場化・境界調整・安全対策
セット検討:擁壁の構造・越境解消・伐根の深さ
5) 特殊施設解体工事
対象:工場・プラント・病院・煙突・橋梁・公共インフラ
注意:石綿・PCB・有害物の調査・処理が伴いがち
セット検討:届出・許認可・安全衛生計画の事前設計
比較早見表(目安)
分類 代表例 相場目安(坪) 工期 騒音/振動/粉じん よくある留意点
構造:木造 戸建・古民家 3–5万円 1–2週 中 密集地の散水・養生、屋根材と石膏量
構造:S造 倉庫・工場 4–7万円 2–3週 中〜高 溶断の防火、重量物搬出コスト
構造:RC マンション 6–10万円 3–5週 高 階上解体の安全・粉じん対策
構造:SRC 高層ビル 8–12万円 4–6週+ 高 工程長期化、分別・搬出計画
工法:手壊し 狭小地 — 長 低 人件費増、時間確保
工法:重機 一般戸建 — 短 中 散水・シートで抑制
工法:ロングアーム 中高層 — 中 中 搬入条件の事前確認
工法:階上解体 都市部高層 — 中〜長 中 高度な安全管理
目的:全解体 更地化 — — — 整地仕様(砕石・勾配)
目的:原状回復 店舗退去 — 短 低 管理規約・時間帯制限
選び方のポイント(チェックリスト)
構造×規模:木造/S造/RC/SRC、延床・階数・地下有無
進入性:前面道路幅員/電線障害/車両・重機の搬入可否
近隣環境:住宅密集/学校・病院の有無/管理規約の制限
目的・仕上げ:更地仕様(砕石・転圧・勾配)/残す外構の線引き
法規・届出:建設リサイクル法/アスベスト調査・届出/道路使用・占用
追加要因:残置物/地中障害(浄化槽・井戸・タンク・杭)/運搬距離
よくある質問
Q. 構造別の解体費用はどれくらい?
A. 目安は木造3–5万/S造4–7万/RC6–10万/SRC8–12万(円/坪)。現地条件と工法で変動します。
Q. どの工法が静かで安全?
A. 手壊しは騒音・振動・粉じんを抑えられますが工期は長め。密集地や狭小地に適します。
Q. 都市部のマンション解体は?
A. 階上解体やロングアームを使い分けます。安全管理・粉じん抑制・搬出計画が肝要です。
Q. 原状回復と内装解体の違いは?
A. 原状回復は契約